「われわれは未知の領域に突入した」北極の海氷面積が最小記録を更新

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アメリカの NSIDC (国立雪氷データセンター)のプレスリリースによると、今年の北極の海氷減少が最小を迎えたとのことです。今年の最終的な海氷面積は約 341 万平方キロにまで下がり、観測史上過去最少の面積となりました。

前回、記録を更新したのは 2007 年(上の図の緑線)。今回はそれを大幅に下回る海氷面積で、研究者の間では驚きとともに受け止められています。

“The strong late season decline is indicative of how thin the ice cover is,” said NSIDC scientist Walt Meier. “Ice has to be quite thin to continue melting away as the sun goes down and fall approaches.”

「季節があとになってからこれほど減少したということは、海氷がどれだけ薄いかを示していると思う」と NSIDC 研究者ウォルト・マイアーは言う。「秋がせまり、太陽の高さが下がってきているにもかかわらず氷が溶けるには、それだけの薄さでないといけない。

これは上の図でいうところの8月の急な減少のことを指しています。私たちはまだ中緯度の残暑のなかにいますが、北極はもう冬の入り口といってもいいのにこれだけ氷がとけているというわけですね。

しかし北極の氷が溶けるのは、必ずしも太陽の日射だけが原因ではありません。今年の8月には、960hPaという大型の台風に匹敵する低気圧が北極海に侵入しており、これがもともと薄い海氷を壊し、海のなかを輸送することで溶けたということも影響しています。

“We are now in uncharted territory,” said NSIDC Director Mark Serreze. “While we’ve long known that as the planet warms up, changes would be seen first and be most pronounced in the Arctic, few of us were prepared for how rapidly the changes would actually occur.”

「われわれは未知の領域に突入した」と NSIDC ディレクターのマーク・セレーズは言った。「長い時間をかけてこの惑星が暖まるにつれて、その変化が北極で最初に観測されることは以前から知られていた。しかしここまで速い変化は、誰も予測できていなかった」

そう、温暖化や気候変動については膨大な知識なすでに蓄積されており、ある程度のことは予測が可能になっている一方で、まだまだ正確に把握できていないことも数多くあります。

そうした気候学の情報は常識的にわかりやすいものもありますが、演繹だけではわかりにくいこともあります。たとえば「北極の氷は地球温暖化の影響でとけている」というのはほぼ確実ですが、それは「北極の氷は空気が暖かいから溶けている」わけではないというのはわかりにくいですよね。

これは研究者がわかりやすい情報提供をしていないことが原因でもあります。私も研究者の一人として、常々こうした場の必要性を感じていました。

そこで本ブログは、研究者の立場から気候学のこうした話題をタイムリーに提供することを目的に更新していきたいと思います。

Press Release: Arctic sea ice reaches lowest extent for the year and the satellite record

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